「あさおPCクラブ」では毎月第2土曜日と第4火曜日の午後、新百合丘で月2回の勉強会を開催しています。この勉強会の参加者は、パソコンを利用する視覚障害者とそのサポートをするボランティアの人たちで、全員が「あさおPCクラブ」の会員です。
視覚障害者にとってパソコンは日常生活の中で欠かせない道具になっています。 WordやExcelで文書作成や表計算をするだけでなく、メール送受信による情報交換、インターネット検索で必要な情報を収集をしたり、毎日の新聞記事や目的の本を探し出して読書を楽しむこともできるのです。
パソコンは全て「音声リーダー」のソフトがインストールされていて、カーソルの位置、文字入力やキー操作の経過、出来上がったデータなどを全て音声で読上げる仕組みになっています。視覚障害者はマウスを使用できませんので、パソコンに接続したイヤホーンから聞こえる音声を頼りにショートカットキーを使ってパソコン操作を進めます。
さて、私たちサポーターの役割は、そのパソコン操作が目的の手順通り進行しているか確認して、若し間違えていれば正しい操作に切り替えるようにフォローします。音声パソコンを駆使して出来上がった結果を確認できた時の達成感は生徒さん、サポーター共々大変嬉しいものです。
私はサポーターとして、生徒さんのスピードになかなか着いていけず十分なフォローが出来ないときがあり、いつも他のサポーターさんや生徒さんからも多くのことを学んでいます。また新しいバージョンのパソコンやソフトのことでも知識不十分なところが多く、まだまだ勉強が足りないと思っており、私にとって毎回が気の抜けない勉強会になっています。
8月に行なわれた暑気払いの席上で、クラブが発足して10年になるという話題が出て、しばし話が弾みました。
正確には、“あさおPCクラブ"の前の教室から数えて10年ということになりますが、いずれにしても、もうそんなになるのかと、当時のことを思うと感慨もひとしおです。
90年代の終わり頃、本格的にパソコンを習いたいという思いにかられていた私は、ちょうどサポーターのTさんから、「今度パソコン教室を開くので、一緒にやってみませんか」と声を掛けていただき、喜んで参加させていただくことにしました。それが、2000年の春から始まったあさおPCクラブ"の前身の「ひびきパソコン教室」でした。
発足当時は、Tさん、Iさん、Bさん、私の生徒4人と、数名のサポーターさんという少ないメンバーでしたが、初めて触れるウィンドウズに戸惑う私に、サポーターのTさんは、窓がいくつも開いたり閉じたりすること、フォルダという引き出しがあって、その中にまた小さな引き出しかおることなど、分かりにくい画面の説明を一つ一つ丁寧に教えてくださり、次第に楽しさを覚えていきました。
まもなくメールができるようになったときには仲間同志夢中になったものです。
また、その年の暮れには初めて年賀状とクリスマスカードの作成をしました。見えなくても自分で絵柄入りのカードができたときの喜びは、今も忘れることはできません。
そして、2002年の春、拠点を福祉パルあさおに移し、“あさおPCクラブ"はボランティア団体として正式にスタートしました。今のサポーターさんの多くは、その年に開催されたパソコンボランティア入門講座を受講され、その後、会員として活動してくださり現在に至っています。
やがて、サポーターさんたちの懸命のご尽力で、パルにインターネットの環境が整いました。ネットが使えるようになると、私たちの勉強意欲も高まり、ますます世界は広がっていきました。視覚障害者は情報障害者ともよく言われます。町の風景、お店の看板、広告、雑誌など、目で見れば瞬時に入ってくる情報も、私たちには中々受け取ることができません。
それらがネットの検索によって、かなりカバーできるようになりました。お店の検索、ニュースの閲覧、路線の検索は今や欠かせません。私たちはガイドヘルパーさんと出かけることが多く、所要時間や運賃など分かれば、待ち合わせの際にとても便利です。観光地の案内などを見ていると、気分はもう現地に飛んでいます。
最近は、radikoというインターネットで聞けるラジオもあり、マンションなど受信しにくいAM放送も、クリアな音で聞くことができます。クラシック音楽も楽しめるようになりました。
巷に出回っている電子書籍などを読む機器も、そのほとんどがタッチパネル方式で、凹凸のない画面に触れることのできない私たちには使いにくいものですが、工夫次第によってはある程度使えるようになるとか…。画面にタッチするとピアノの鍵盤が出てきたりと、楽しいものもありそうですので、何とか使えるようになりたいと、夢は膨らむばかりです。
このように、やりたいことは数限りなく、パソコンは、今や生活になくてはならないものになっています。
〔継続はカなり〕これからも私なりにゆっくりとした歩みで、パソコンライフを楽しみたいと思っています。そして、このすばらしい世界を、多くの視覚障害の方と共有できたらと願っています。